ワーキングメモリ不足で仕事や勉強に集中できない人に。「パズル」が良いワケ【中野信子】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ワーキングメモリ不足で仕事や勉強に集中できない人に。「パズル」が良いワケ【中野信子】

『脳はどこまでコントロールできるか?』より #3

■「アナグラム」で頭スッキリ

 ウェスタン・ワシントン大学のハイマンという心理学者が提唱している、ワーキングメモリ(作業記憶領域)を仕事に振り分けるための、おまじないのようなものです。

 ハイマンが唱えたのは、

「頭のなかに音楽が鳴り続けて消えなくて落ち着かない場合は、適度な難易度のパズルをやるとよい」

 という提案です。

 こうすると脳の作業領域をパズルに使うため、音楽の鳴る余地を圧迫するので、音楽が消えてくれる、という理屈です。

 物事に集中するには、頭のなかの作業領域(ワーキングメモリ)」をそのタスクのために確保しなければなりません。すると、ハイマンの方法を使うと、頭になんだかもやもやと残ってしまうゲームのことや、食べ物のこと、集中を乱す誘惑を追いやってくれるのです。

 ハイマンは、パズルとしては、適切な難易度のアナグラム(ある単語の文字の順番を入れ替えて別の単語をつくる遊び)がよいとしています。

 日本語だと、たとえばタジャレを考えたり、さんずいのつく漢字を1分間にどれだけ思いつくか、のようなトライアルも有効でしょう。数独を1題やってみる、というのもいいかもしれません。

 ただし、問題には条件があって、易しすぎても難しすぎてもダメなのです。易しすぎるとパズルに使う領域が小さすぎて、誘惑を追いやってくれるほどのパワーが足りない。難しすぎると、そもそものパズルに集中できません。その人の適度な難易度でやることが重要です。

 これは、何か作業を始める前に、机の上をきれいに片付けるように、脳の作業領域を片付ける、というイメージです。

「勉強を始める前の儀式」「何か作業を始める前のおまじない」として、自分の好みに合った、簡単なパズルやゲームを「頭のウォーミングアップ体操」として数問やってから、作業を始めるというのは、とても有効な方法になるでしょう。タスクに集中するための作業記憶領域を空けておくためにとても便利な方法です。

文:中野信子

『脳はどこまでコントロールできる?』より構成〉

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中野 信子

なかの のぶこ

脳科学者、医学博士。東京大学工学部卒業後、2004年、東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了。2008年、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2010年まで、フランスCEAサクレー研究所で研究員として勤務。現在、東日本国際大学・客員教授。日本文化芸術機構・事業戦略会議委員。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。著書に『脳はどこまでコントロールできるか?』(KKベストセラーズ)、『科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)、『脳内麻薬』(幻冬舎新書)、『努力不要論』(フォレスト出版)など。また、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)、「ワイド! スクランブル」(テレビ朝日系)、「有吉ゼミ」(日本テレビ系)をはじめ、多数のテレビ番組で活躍中。

※プロフィールは公開時のものです

 

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