ワーキングメモリ不足で仕事や勉強に集中できない人に。「パズル」が良いワケ【中野信子】
『脳はどこまでコントロールできるか?』より #3
■「アナグラム」で頭スッキリ
ウェスタン・ワシントン大学のハイマンという心理学者が提唱している、ワーキングメモリ(作業記憶領域)を仕事に振り分けるための、おまじないのようなものです。
ハイマンが唱えたのは、
「頭のなかに音楽が鳴り続けて消えなくて落ち着かない場合は、適度な難易度のパズルをやるとよい」
という提案です。
こうすると脳の作業領域をパズルに使うため、音楽の鳴る余地を圧迫するので、音楽が消えてくれる、という理屈です。
物事に集中するには、頭のなかの作業領域(ワーキングメモリ)」をそのタスクのために確保しなければなりません。すると、ハイマンの方法を使うと、頭になんだかもやもやと残ってしまうゲームのことや、食べ物のこと、集中を乱す誘惑を追いやってくれるのです。
ハイマンは、パズルとしては、適切な難易度のアナグラム(ある単語の文字の順番を入れ替えて別の単語をつくる遊び)がよいとしています。
日本語だと、たとえばタジャレを考えたり、さんずいのつく漢字を1分間にどれだけ思いつくか、のようなトライアルも有効でしょう。数独を1題やってみる、というのもいいかもしれません。
ただし、問題には条件があって、易しすぎても難しすぎてもダメなのです。易しすぎるとパズルに使う領域が小さすぎて、誘惑を追いやってくれるほどのパワーが足りない。難しすぎると、そもそものパズルに集中できません。その人の適度な難易度でやることが重要です。
これは、何か作業を始める前に、机の上をきれいに片付けるように、脳の作業領域を片付ける、というイメージです。
「勉強を始める前の儀式」「何か作業を始める前のおまじない」として、自分の好みに合った、簡単なパズルやゲームを「頭のウォーミングアップ体操」として数問やってから、作業を始めるというのは、とても有効な方法になるでしょう。タスクに集中するための作業記憶領域を空けておくためにとても便利な方法です。
文:中野信子
〈『脳はどこまでコントロールできる?』より構成〉
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